大先輩を舐めすぎ/看護師・小池の場合
ある日、
私は夜勤明けでした。
たしか、
2019年の秋だったと思います。
近畿中央病院の夜勤は、
基本的に3名で行っています。
私は、
当時で20年以上のキャリアがありましたが、
他の2人(Mさん・Kiさん)は私より先輩で、
それに加え夜勤ヘルパー(例のKoさん:彼女はヘルパーとしては有能)も居るという、
非常に心強い夜勤でした。
たしか、
落ち着いた夜勤だったと思いますが、
先輩2人への忖度発動で、
私の受け持ちが他の2人に比べてキツかったのも覚えています。
朝9時前、
なんとか仕事が終わり、
MさんとKiさんは座ってカルテを書いていました。
Koさんも、
座って定時の9時が来るのを待っていました。
私は、
まだ残務があって、
詰所と病室を行き来していました。
すると、
当時5年目の看護師・小池が「はい」と、
私の前に病棟の備品の懐中電灯を差し出したのです。
私が、
「何や?」と言うと、
「片付けてください」と言うのです。
懐中電灯は、
夜勤をする上での必需品ですが、
私は病棟のものではなく私物を使っています。
それは、
病棟のものの使い勝手が悪いこともありますが、
今回のように誰が使ったかわからないものを片付けろと言われるのが嫌で、
そうしているのです。
自分のものなら、
もし置忘れを指摘されても、
自分で片付けるのが 当然だからです。
この時は、
私が使ったものではない私のものではない懐中電灯を、
まだ残務でバタバタ動き回っている私に片付けろと、
小池は言うのです。
いつもなら、
そこまで腹を立てることはありませんが、
この時はさすがに反論しました。
「これは私のものではないし、私が使ったものでもない。何で、片付けんといかんのんや」
すると小池は、
「連帯責任です」と。
は?
さすがの私もブチ切れて、
「MさんもKiさんもKoさんも、もう座っとるじゃないか。こっちは、まだ仕事残ってて行き来しとんねん。それやったら、3人の誰かに言えや」と小池に言いました。
すると小池は、
まさか私がそこまで言うとは思わなかったようで、
不服そうな表情をしながらも引き下がり、
懐中電灯は自分で所定位置に戻しました。
普段怒らん者が怒ったら、
どれだけ怖いかということを、
小池は思い知ったことと思います。
要は、
私が舐められていたということです。
当時の小池は、
たしか5年目。
私は23年目でした。
看護師としても、
人としての経験値も格段に違います。
私が明らかに間違ったことをしていて、
それを指摘されたのなら、
謝りもするしその指摘に応じた行動をします。
しかし、
今回は私にはまったく落ち度はありません。
しかも、
最終的に自分で戻すのなら、
最初から言わなければいい話。
ちなみに、
かく言う小池、
のみならず他のスタッフも、
よく置忘れをしていますが、
私は気付いてもその人に指摘することなく、
自分で戻します。
お互い様ですから。
特に、
置き忘れたのが夜勤者ならなおさらです。
夜勤明けで疲れているところに、
そんなしょうもない用事を言ったらかわいそうだからです。
その人にしかできないことなら別ですが。
これが、
一般社会では当たり前の考えだと思います。
その、
社会常識が通用しないのが、
病院というところ。
まあ小池の場合、
看護系の学校を卒業して、
そのまま病院に入ったでしょうから、
社会常識を学ぶ場がなかったかもしれませんが、
学生時代に、
アルバイトの経験とかないのだろうか。
その経験があれば、
「お互い様」ということはわかるはずです。
病院というところは、
決して社会の常識を学ぶところにはならないということです。
こんなこと、
今だからこれぐらいで済んでいますが、
私が若手だった頃に、
先輩(しかも大先輩)に対してこんなことしようものなら、
そこから説教が始まり、
一生イジメられていたと思います。
それが良いとは思いませんが、
少なくともまだ上下関係は、
きちんとしていたと思います。
この一件のあと、
私は小池の置忘れを黙って片付けるのを、
一切やめました。
当然です。