これは、
私が最初に働いた病院での話。
ある年、
毎年行われるものよりも、
少し規模の大きい災害訓練が、
行われることになりました。
その設定というのが、
病院の建物に航空機が衝突して突き刺さり、
そこから負傷者を運び出して、
手当に当たるというもの。
私は、
幼いころから乗り物好きでしたが、
その頃、
飛行機はまだそこまで好きではありませんでした。
理由は、
恥ずかしながら、
まだ乗ったことがなかったからです。
しかし、
この設定に無理があることは、
容易に想像できました。
この病院の上は、
大阪伊丹空港への進入アプローチのルートになっていて、
まったくありえない話ではありません。
しかも、
「9.11」
のようなハイジャックによるテロも、
まったくないとは言い切れません。
しかし、
航空機は、
そんなに頑丈には造られていません。
頑丈に造ってしまうと、
重量がかさんで、
飛べなくなってしまうからです。
しかも、
航空機は、
高速で飛行しています。
「9.11」でもわかるように、
世界貿易センタービルに突入した航空機は、
衝突直後に、
木端微塵になりました。
ですから、
都合よく建物に突き刺さることなど、
まずあり得ないのです。
その前に、
建物自体が倒壊してしまう危険性が高いので、
航空機の乗客の前に、
入院患者の避難を、
最優先にしなければならないはずです。
自らの身を守ることで、
精一杯の状況になることは、
「9.11」でも明らかです。
これを立案したのは、
看護部のお偉いさんたちらしいです。
呆れて、
モノも言えませんでした。
私の同期で、
一番仲の良かった男性看護師は、
大の飛行機好きなのですが、
「アホちゃうんか」
と、
激怒していました。
こんな、
非現実的な災害訓練、
絶対参加したくないと思っていましたが、
幸いなことに、
この日私は休みでした。
私は、
こういう運には、
恵まれているようです。
後日談を聞きましたが、
非現実的過ぎて、
誰も訓練に身が入らなかったようでした。
この訓練の設定で、
何階に航空機が突き刺さることになっていたか忘れましたが、
その当該階の看護師長が、
「なんでウチの階なのよ」
と、
激怒していたようです。
訓練であって、
実際ではないのですから、
怒る意味がわかりません。
怒る前に、
設定に無理があることを言って、
現実味のある設定に変える提案をするべきです。
非現実的な訓練など、
何の役にも立ちません。
せっかく、
時間をかけて、
人を動員して行うのですから、
もっと現実的な、
訓練を行ってもらいたいものです。