看護部本日モ反省ノ色ナシ

看護師を中心に医療界の変なエピソードを話していきます

私は看護師をしておりますが まあおよそ一般社会では通用しないことがまかり通る それが看護師の世界です そんな看護師のエピソードとともに 医療界(病院)の変なことも話していきたいと思います

薬は大事

患者が入院中、

内服薬の自己管理が困難な場合には、

看護師が管理をします。

 

しかし、

退院後、

患者本人以外に、

管理を依頼できる人が居ない場合には、

徐々に自己管理ができるよう、

指導をしていきます。

 

看護師管理であったものを、

 

「1日配薬」

 

という、

1日分を、

 

「朝食後」「昼食後」「夕食後」「眠前」

 

のBOXにそれぞれ入れて、

朝一括で渡す方法から、

開始します。

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そして、

それぞれ直後に、

内服が出来ているかを確認します。

 

内服できていなかったら、

その場でのんでもらうことで、

のみ忘れを防止します。

 

のみ忘れがない状態が続けば、

今度は、

 

「お薬カレンダー」

 

に移行します。

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近畿中央病院のやりかたでは、

まず看護師が、

1週間分の薬を、

患者のところに持っていきます。

 

そして、

患者自身に、

お薬カレンダーに、

薬をつめてもらいます。

 

看護師は、

間違いなくつめられているか、

確認します。

 

間違いがあれば、

患者に指導しながら、

つめ直します。

 

内服の確認は、

1日配薬の時と同じです。

 

これが、

きちんとできたら、

いよいよ、

 

「自己管理」

 

へと移行します。

 

自己管理になると、

入院中は、

1週間毎に薬が出されるので、

その都度薬剤師が、

患者のところに薬を持っていきます。

 

新たな薬が出た場合も同様で、

薬の説明(用法用量)を兼ねて、

薬剤師が患者のところへ行きます。

 

看護師も、

患者の元を訪れた際に、

 

「薬はのみましたか?」

 

と声をかけます。

 

薬剤師は、

次の処方が出て、

持っていた時に

空袋を回収して、

残薬がないかを確認することで、

のみ忘れ防止に努めます。

 

しかし、

これらの段階を踏んでも、

また逆戻りになる患者も、

少なくありません。

 

患者の他に、

しかりとした家族が居る場合は、

その人に管理を依頼することも多々あります。

 

それでもダメな場合は、

訪問看護に依頼するなど、

確実に内服が行えるよう手配するのも、

看護師の役割です。

 

ちなみに、

私の場合、

看護師ということで、

最初の入院の時も、

2回目の入院の時も、

自己管理でした。

 

一番問題なのは、

入院中は、

きちんと自己管理ができていたのに、

退院したらできなくなる患者が、

居るということです。

 

看護師としては、

信用して自己管理をしてもらっていますが、

退院後は確認ができないので、

もどかしいところです。

 

では、

以上のことをふまえて、

こんな事例を。

 

これは、

私が救命救急センターに居た時の話です。

 

その患者が、

その病院の通院患者であったかは、

忘れました。

 

ですから、

 

「我々がきちんと指導したのに・・・」

 

という事例ではないのですが、

薬を、

決められたとおりに使用するということを話すのに、

ちょうどよい事例だと思うので、

話します。

 

その患者は、

頭部の疾患により、

尿崩症を患っていました。

 

尿崩症については、

以前に触れているので、

そちらを参照してください。

型通りのことしかできない看護師/応用の利かない看護師・OKMT - 看護部本日モ反省ノ色ナシ (hatenablog.jp)

 

この時にも話しましたが、

尿崩症に対しては、

 

「ピトレシン」

 

という薬を使います。

 

しかし、

ピトレシンは、

点滴薬のため、

入院中にしか使えません。

 

それを、

普段の生活上でも使えるようにしたのが、

 

「デスモプレシン」

 

という薬です。

デスモプレシン - Wikipedia

 

この薬は、

点鼻薬になっているので、

ピトレシンより手軽に、

しかもやり方さえ覚えれば、

誰でも使うことができるのです。

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その患者も、

デスモプレシンを使用して、

普段の生活を行っていました。

 

そしてある日、

旅行に行くことになったのですが、

その時に、

デスモプレシンの持参を、

忘れたらしいのです。

 

そのことに、

旅先で気付いたのですが、

 

「2~3日のことだから大丈夫だろう」

 

と自己判断し、

結局旅行中、

デスモプレシンを、

決められた通り投与しませんでした。

 

その結果・・・

 

尿崩症の症状、

つまり多量に排尿する状態となった結果、

脱水となりました。

 

それで、

血栓ができたことにより、

下肢の血流が途絶え、

片方の下肢が壊死してしまいました。

 

そして、

片方の下肢を切断することに。

 

もちろん、

そこに至るまでには、

様々な症状が出現したはずです。

 

下肢の、

皮膚色不良であるとか、

しびれや痛みなど。

 

患者本人曰く、

それらの症状はあったけど、

旅行が楽しくて放置してしまったと。

 

その結果、

取り返しのつかない、

重大な結果を招いてしまったのです。

 

最悪、

死に至ることもあるので、

まだマシなのかもしれませんが、

その患者の奥さんは、

 

「なんて馬鹿なことを・・・」

 

と、

嘆いていました。

 

ただ救いなのは、

患者本人が、

意外とあっけらかんとしていて、

気持ちが前向きだったことです。

 

「なってしもうたもんはしかたないやん」

 

と。

 

今回のように、

重要な薬を忘れた場合は、

気付いた時点で、

病院を受診するべきです。

 

医師であれば、

尿崩症という病気が重大で、

デスモプレシンという薬が大切なことは、

誰でも知っているはずです。

 

ですから、

かかりつけでなくても、

絶対に処方してもらえます。

 

それ以前に、

医師から処方された薬は、

用量用法通り使用することが、

必須です。

 

特に男性に多いのですが、

 

「自分の体は自分が一番よくわかっている」

 

と、

薬を自己中断する人が居ます。

 

これは、

絶対にダメです。

 

自己調節していいのは、

緩下剤や睡眠薬など、

医師や薬剤師が、

 

「自己調節してもいいです」

 

と言ったものだけです。

 

もし、

その薬をやめたいのであれば、

次の受診まではのみ続けて、

診察の際に、

医師に告げるべきです。

 

特に高齢の人は、

 

「薬は、体の負担が大きいから、なるべくのみたくない」

 

という考えの人が多く、

自己中断に至ることが多いのですが、

現代の薬は、

昔のものに比べて、

副作用の出現率が、

極力低くなるように、

つくられています。

 

ですから、

副作用の出現を、

そこまで恐れる必要はないのです。

 

万が一出現したら、

その時点で速やかに、

処方した医師の診察を受けて、

指示を仰ぐべきです。

 

中には、

副作用よりも、

効果を優先して、

中止できない薬もあります。

 

自己判断は、

絶対に避けなければなりません。

 

以上、

当たり前のことのようですが、

その当たり前のことが、

当たり前に行われていないのが、

現状なのです。