前項でも登場しましたが、
私の同期で、
一番仲が良かった、
HMMT君のお話です。
おさらいをしておくと、
彼とは同期でしたが、
年は1つ上でした。
広島出身で、
九州の国立医療短期大学を卒業して、
大阪で就職したのです。
国立の、
医療短大出身という点は、
私と同じでした。
飛行機が好きで、
本当は、
航空自衛隊に入りたかったそうですが、
その夢は、
叶わなかったようです。
そういえば、
近畿中央病院には、
航空自衛隊に在籍したことのある、
男性看護師が居ました。
今は、
故郷の九州に、
帰ってしまいましたが。
彼は、
中途採用で近畿中央病院に来たのですが、
そんなに長い期間在籍することなく、
辞めて行きました。
近畿中央病院とは、
そういうところなのです。
話が逸れましたが、
私とHMMT君は、
ともに成人精神神経科に配属されました。
私は、
1年で救命救急センターに、
異動となりましたが、
引き続き、
よく一緒に遊びに行く仲でした。
私が、
たぶん救命救急センターの、
重症病棟の所属になってからのことですから、
3年目以降の話になります。
ある日、
夜勤をしていると、
3次救急搬送の連絡がありました。
CPA(心肺停止)とのことでしたが、
蘇生に成功したら、
重症病棟に入ることになるので、
もう1人の夜勤とともに、
入院の準備をすすめました。
続報が入り、
どうやら、
成人精神神経科の入院患者で、
外泊中に自殺をはかったようでした。
救急外来での処置が、
長引ていたので、
私は様子を見に行きました。
様子から見て、
蘇生は厳しいようでした。
当直医が私に、
「(私の名前)君、知ってる患者か?」
と、
尋ねましたが、
私の知らない患者でした。
結局、
その患者は、
蘇生することなく亡くなりました。
後日、
HMMT君から、
その患者の話を聞きました。
外泊するにあたり、
HMMT君は、
反対したそうです。
しかし、
他のスタッフは、
誰も反対せず、
主治医も許可したので、
結局外泊したのです。
「どうなっても知らんぞ」
HMMT君は、
そう思ったそうですが、
その通りの結果となりました。
どうやら、
病院を出たあと、
すぐに近くの川に、
飛び込んだようでした。
その患者の家族は、
そうなりそうな予感もあったし、
死ぬことで本人が楽になったのならと、
特に病院側の対応を責めることは、
ありませんでした。
当時は、
それで済んだかもしれませんが、
これが今なら、
訴訟になっていたでしょう。
このHMMT君、
当時は3~4年目ぐらいだったと思いますが、
実は新人の頃から、
結構こういう指摘をしていました。
そして、
それが見事に当たるのです。
要は、
「見る目がある」
ということだと思います。
このブログで、
繰り返し言っている通り、
見る目、
特に人を見る目を養うことは、
大事なことです。
特に、
看護師など、
人にかかわる仕事をしている人は。
今回のエピソードも、
HMMT君の提言を、
主治医が聞いていれば、
防げたことなのです。
前々項でも話しましたが、
看護師は、
医療職の中で唯一、
24時間患者を看ています。
ですから、
患者のちょとした変化も、
気付きやすいのです。
その看護師が、
「外泊させるのは危険」
と言っているのですから、
主治医は、
外泊許可を出すべきではないのです。
しかし、
もっと問題なのは、
HMMT君より先輩の看護師が、
誰一人として、
外泊に反対しなかったことです。
余程、
人を見る目がないということでしょう。
その中には、
あのT崎K三も含まれます。
看護師の中でも、
精神科の看護師は、
さらに人を見る目があることを、
求められると思います。
それなのに、
後輩(HMMT君)に負けてしまうとは・・・
しかし、
この患者の場合、
まだ誰も道連れにしなかっただけ、
いいのかもしれません。
自殺自体、
良いことではありませんし、
防がなければなりません。
ですが、
本人がそれで救われるのであれば、
しかたがないのかもしれません。
もし、
どうしても死にたいのであれば、
ひとりで行うべきです。
決して、
他人を道連れにするようなことは、
あってはならないのです。
それなら、
自殺など、
するべきではありません。
前にも話した通り、
精神科の患者の中で、
自殺をほのめかしている人に限って、
実はする気が無い人が、
大半を占めています。
表立って、
言っていない人のほうが、
危険です。
そういう部分を、
見抜く能力を持っているのが、
私の同期HMMT君なのです。
彼とは、
同期の中で、
一番よく遊びに行きました。
スノーボードを一緒に始めたり、
旅行にも行きました。
しかし、
今は疎遠になっています。
3~4年目で、
こんな感じなのですから、
今はもっと、
優秀な看護師になっていることでしょう。
私は、
看護師を辞めたので、
あわせる顔がありませんが、
10何年か振りに、
会ってみたいものです。