私が、
最初に働いていた病院から、
系列の病院に転勤したあとの話です。
その病院では、
各部署に「看護研究チーム」があって、
1年間活動して、
年度末に院内で発表会が開催されるという、
形式がとられていました。
私は、
その病院に転勤してきて2年目に、
そのチームに入れられました。
前年に教えた新人の、
2年目看護研究を指導し、
またその年は、
また新人を教えることになっていたので、
忙しい年だったことを、
今でも覚えています。
「看護研究チーム」のメンバーは、
資料を捨てたので、
はっきり思い出せないのですが、
HUYM主任・私と同じ年のSWHRさん・准看護師でベテランのTNKさん、
そして若い子が数人居ました。
チームの最初の集まりで、
テーマを決めることにしていたのですが、
HUYM主任が、
食事時にBGMを流すことによる効果を検証したいという、
テーマを提案しました。
しかも、
どうしてもそれをやりたかったのか、
資料まで作成して、
もうそのテーマでいく体で、
話をすすめました。
その日は、
結局はっきりとテーマを決めませんでした。
私の中では、
HUYM主任の「持ち込み企画」に、
疑問があったからです。
すると、
メンバーのSWHRさんから、
メールが来ました。
「HUYM主任のテーマどう思う?私は、評価が難しいから、他のテーマにしたほうがいいと思う」
私と、
同じ考えでした。
私の疑問も、
そこにあったのです。
それで、
次回の集まりで、
そのことを言って、
別のテーマにすることで一致しました。
迎えた次の集まり、
事前に示し合わせた通り、
SWHRさんが、
HUYM主任に対し、
テーマを変えることを提案しました。
HUYM主任は、
思ったよりも抵抗を示しましたが、
味方が1人も居ない状況だったので、
渋々引き下がりました。
これは、
SWHRさんが、
若い子にもあらかじめ根回しをしていた結果ですが、
その若い子も、
私たちと同様の理由で、
HUYM主任のテーマに、
疑問を持っていたようです。
TNKさんはというと、
どちらの味方というわけでもなく、
決まった方に従うといったスタンスでした。
この人、
決して悪い人ではないですが、
積極性に欠ける部分がありました。
結局、
SWHRさんが提案したテーマで、
研究をすすめることになりました。
後日、
役割分担を決めていったのですが、
それぞれのメンバーが、
自分の得意分野や、
勤務の都合等を考えて、
自ら担当を決めていく中、
TNKさんの積極性がないことに、
SWHRさんが、
いらだちを感じていました。
おそらく、
私より何年か余計に、
SWHRさんはTNKさんと一緒に働いていて、
その間に、
私の知らない「わだかまり」のようなものが、
あったのだと思います。
それで、
リーダーとしてSWHRさんが、
TNKさんにこう言いました。
「TNKさんには、発表を担当してもらいます」
この言葉に、
TNKさんの顔がこわばりました。
しかし、
文章まで考えろとは言っていません。
文章は、
みんなで考えて、
それをパソコン担当の私が、
清書して、
それを読むだけです。
誰にでもできることです。
断る理由はありません。
TNKさんは、
渋々了承しました。
これに、
最初に難色を示したのは、
HUYM主任でした。
HUYM主任は、
この話し合いの場に居ませんでした。
それで、
役割分担を知って、
SWHRさんに、
やんわりではあるけれど、
別の役割に変えるよう言ってきたそうです。
しかしSWHRさんは、
先に述べた理由を盾に、
それには応じませんでした。
HUYM主任も、
それ以上強くは言えず、
その場は引き下がったようです。
しかし、
それだけでは済みませんでした。
HUYM主任は、
病棟師長のKNBRに、
そのことを話したようです。
今度は、
KNBRが、
SWHRさん、
そして私に圧力をかけてきました。
それでも、
2人とも動じませんでした。
SWHRさんは、
KNBRに対し、
こう言ったのです。
「じゃあ、TNKさんをメンバーから外してください」
そう言うと、
それはできないから、
KNBRは、
その場は引き下がりました。
「その場は」
そう、
KNBRは、
今度副看護部長に相談したのです。
そこまでして、
TNKさんを、
発表者にしたくないのでしょうか。
発表もできない人物なら、
そもそも研究チームに入れなければいいのではないでしょうか?
たぶん、
病棟内の役割・グループ分けは、
病棟師長と主任が決めて、
その決定事項を看護部(看護部長・副看護部長)が、
決済しているはずです。
決裁した以上は、
承認したということなので、
そのチームのリーダーであるSWHRさんが決めたことに、
とやかく言う権限はないはずです。
ちなみに、
この時の看護部長は、
あの「上司の鏡」でした。
あと、
副看護部長は、
1人しかおらず、
1人ですべての役割を、
行っていました。
あとになって文句を言うのなら、
最初から上層部で、
役割を決めたらいいのではと思います。
副看護部長から、
我々に発表者の件で話があったのは、
もう発表日が迫っている時でした。
しかしSWHRさんは、
そんな副看護部長にも怯まず、
こう返しました。
「そこまで、TNKさんを発表者から外したいのなら、外してもいいですけど、その場合は、書類やパワーポイントのメンバー名から、TNKさんの名前を外します。それでもいいですか?」
SWHRさんの主張は、
当然のことです。
この時点で、
TNKさんを発表者から外すと、
TNKさんは1年間、
チームでほぼ何もしていなかったことになるからです。
発表者を引き受けてくれたから、
他の仕事を免除していたのですから、
我々としては、
発表をしてもらわないと、
名前を外すしかないのです。
我々の、
正当性のある主張には、
さすがの副看護部長も、
引き下がるしかありませんでした。
しかし、
これで終わりではありませんでした。
発表前日、
パワーポイントのデータを、
発表用のパソコンに入れるように指示されていたので、
チームの何人か(私・SWHRさん・若い子)で、
発表会場に行きました。
そして、
データをパソコンに入れ、
動作確認もしました。
あとは、
発表の時を待つだけです。
翌日、
発表時間を迎えました。
TNKさんが発表者、
そして私がパソコンを操作して、
パワーポイントを出していました。
すると!
昨日、
ちゃんと作動しているのを確認していたにもかかわらず、
文字がズレている箇所が、
いくつか認められました。
もう、
どうしようもないので、
そのまま続けるしかありません。
TNKさんの発表自体は、
事前の猛練習の甲斐あって、
ほぼ問題なく終わりました。
しかし、
パワーポイントで恥をかいたことは、
めちゃめちゃ上手なわけではないけれど、
そこらの看護師どもより自信のある私にとっては、
最大の屈辱でした。
その時の、
副看護部長の顔が、
「悪い顔」をしていたのを、
もう20年近く前のことですが、
今でも覚えています。
人のことを疑うのは良くありませんが、
前日私がパソコンにデータを入れ、
動作確認をして帰ったあとに、
誰かが、
データをいじったと考えたら、
すべての辻褄が合うのです。
TNKさんは、
完ぺきとは言えないまでも、
きちんと役割を果たしてくれました。
主任・病棟師長・副看護部長は、
どうしてそこまで、
「TNK降ろし」に躍起になっていたのでしょうか。
結果をみれば、
「案ずるより産むが易し」であると思います。
TNKさんにとっても、
良い経験になったはずです。
上層部の方々も、
こんなことに労力を使うのなら、
最初からTNKさんを、
メンバーに入れなければいい話です。
メンバーになったからには、
何かしらの収穫がないといけないわけで、
そういう意味でも、
我々のしたことは、
正しいことだったと思います。
しかし、
上層部の「報復」は、
やり方が汚いと思います。