前項の続きです。
ふたつ目のエピソード。
循環器内科の患者で、
心臓カテーテル検査が行われます。
心臓カテーテル検査と冠動脈造影検査 - 06. 心臓と血管の病気 - MSDマニュアル家庭版 (msdmanuals.com)
そして、
治療が必要と判断された場合は、
PCIが行われます。
PCI (経皮的冠動脈インターベンション) | 急性心筋梗塞.com - 急性心筋梗塞の患者さんをサポートする情報サイト (xn--ymsx5oniia519h1i2a.com)
PCIを受けた人は、
定期的に心臓カテーテル検査を受ける必要があります。
そんな患者の中に、
HRKWという患者が居ました。
その患者が、
一風変わった患者であることは、
噂では聞いていましたが、
私のチームの患者でありながら、
あまりかかわったことはありませんでした。
ある日、
私はリーダーをしていました。
その日は、
いわゆる「カテ日」、
つまり心臓カテーテル検査の日でした。
心臓カテーテル検査だけの場合は、
基本的に1泊2日で、
翌日には退院となります。
リーダーとして、
翌日の退院の手配をするのは、
当然の業務です。
病院における退院は、
基本的に午前10時頃となっていますが、
私は一応本人に、
確認することにしています。
HRKWのところにも、
確認に行きました。
「HRKWさん、明日退院」だと思いますが、帰られるとしたら何時に帰られますか」
するとHRKWは、
こう答えました。
「なんや。帰れっていうんか。先生からは、明日の採血の結果見てからって言われてるんや。天下の近中が、そんなことしてええんか」
私は、
目が点になってしまいました。
いつもしていることで、
こんなことを言われたのは初めてでした。
その前に、
「天下の近中」に、
ひっかかってしまいましたが・・・。
「天下」でも、
なんでもありませんから。
どうやら、
意味を取り違えているようなので、
その点をお詫びした上で、
改めて説明しましたが、
聞く耳を持ちません。
一旦、
詰所に戻り、
看護師長に報告しました。
その直後、
HRKWは詰所にやってきて、
私のほうを指してこいう言いました。
「事務の奴が帰れって言った」
は?
私は、
どうやら事務方と間違われていたようです。
いやいや。
そもそも、
HRKWは、
近畿中央病院に何度も入院していて、
退院に関して事務方が来たことなど、
今まで一度もなかったでしょうが。
HRKWは、
言うことだけ言うと、
部屋に戻って行きました。
病棟師長は、
あらかじめ私が報告していたおかげで、
「ああこのことね」ぐらいの反応でした。
どう考えても、
私が正しくて、
HRKWが理不尽だと、
判断したのだと思います。
これが、
報連相の大切さです。
約束の時間に訪問して不在。そしてさらに!/何様のつもり・前田正美 - 看護部本日モ反省ノ色ナシ (hatenablog.jp)
患者よりカンファレンスが大事な病院/ベテランを小学生扱い・近畿中央病院 - 看護部本日モ反省ノ色ナシ (hatenablog.jp)
心臓カテーテル検査は、
クリニカルパス(パス)運用なので、
オーダーを入れた時点で、
入院から退院までのオーダーが、
すべてなされています。
クリニカルパス | 兵庫医科大学病院 (hyo-med.ac.jp)
よって、
よほどの逸脱(バリアンス)がない限り、
翌日退院は既定路線なのです。
HRKWの言い分にも、
多少理由がありました。
HRKWの主治医の先生は、
説明が丁寧な人で、
HRKWが話を全然聞いていないことが多々あったから、
パスに既定値として入っている、
退院日の採血についても、
改めて説明したのです。
「採血に問題がなかったら退院にしましょう」
これは、
上で述べたように、
パスの既定路線なので、
採血結果は何もないことが前提になっています。
つまり、
採血結果問題なし→退院は、
すでに決まっていることなのです。
これをHRKWは、
採血の結果で退院が決まると、
間違って解釈したのです。
このふたつは、
同じようで、
実はニュアンスが違います。
その後HIRKWは、
弟まで呼び寄せて、
2人で私のことを主治医に抗議しました。
結局、
その日のうちに退院することになりました。
手を煩わせてしまったことに対して、
私は主治医に謝りましたが、
主治医もHRKWが変わり者であることはわかっていたので、
お咎めはありませんでした。
それからHRKWは、
心臓のほうは問題なく経過しましたが、
肝硬変を患い、
苦しんで苦しんだ挙句、
転院先で亡くなったそうです。
亡くなったことの人は、
悪く言いたくありませんし、
ご冥福をお祈りしますが、
このエピソードについても、
私には落ち度はありません。
良かれと思って、
尋ねたのです。
こういう輩は、
退院時間原則午前10時と決まっているから、
確認しないで居ると、
「午後に帰るつもりやったのに」と、
結局は文句を言うものなのです。
前項と今回のエピソードの2人、
もちろん偶然でしょうし、
そうは思いたくありませんが、
これが罰が当たったのだとすれば、
私はいくぶん救われます。
クレームの大半は、
手を抜いたことによって招いた、
言われても仕方がないことか、
患者側の理不尽かの、
どちらかなのです。
逆に言えば、
仕事をちゃんとしていたら、
例えクレームを言われたとしても、
自分の身は守ることができます。
一般的に、
阪神間においては、
阪急沿線は上品で、
阪神沿線は下品だと言われています。
しかし、
阪急沿線の近畿中央病院の患者層は、
決して悪くはないのですが、
時々このふたつのエピソードのような、
変な患者が居ます。
ごく少数派ではあると思いますが、
「類は友を呼ぶ」、
つまり、
そういう患者が来る病院とは、
そういう気質にあるということでしょうか。
今まで話してきた、
近畿中央病院の話を総合すると、
そう判断しても、
差支えないと思います。