患者のことは、
あまり書きたくありませんが、
もうだいぶ前のことですし、
個人は特定できないので、
書かせていただきます。
ひとつ目の事例。
近畿中央病院では、
糖尿病でインシュリンを打つ患者は、
食事を配膳する時に、
インシュリンを一緒に持っていく運用になっていました。
ある日、
私は夜勤でした。
朝、
食事を配る時に、
ある年配の女性患者(名前を忘れたのでQさんとします)に、
配膳しました。
このQさん、
チームが違ったのと、
入院期間が短かったこともあり、
私はまったくかかわったことがありませんでした。
ですので、
Qさんが、
どんな患者かも、
把握していませんした。
食事のトレイに、
インシュリンが乗っていたので、
糖尿病であることは、
その場でわかりました。
本人のところに、
食事とインシュリンを持っていき、
私はこう尋ねました。
「Qさんはご自分でインシュリンを打てますか?」
インシュリンを自身で打てる人には、
自分で打ってもらい、
できない人は、
看護師が打つ運用でした。
Qさんにかかわるのは初めてで、
インシュリンを自分で打てるかどうか把握していなかったので、
そのように尋ねました。
私の行動は、
看護師として当然のことです。
するとQさんは、
「はい」と答えたのです。
朝食の配膳が終わった頃、
Qさんの受け持ち看護師から、
「Qさんがインシュリンを打たないと言っている」という報告があり、
私はQさんの元に行きました。
Qさんに事情を聞くと、
「私はインシュリン打てないのに、あなたはそのまま置いて行った。もう私は打ちません」
と言うのです。
は?
私は、
ちゃんと尋ねたではないか!
しかも、
ちゃんと「はい」と返事したではないか!
これで、
そんなキレ方されても、
理不尽以外の何ものでもありません。
しかし、
看護師として、
こちらの正当性を主張することはできないので、
お詫びをしました。
ただ、
本人の体が心配なので、
インシュリンだけは打つように説得したのですが、
Qさんは頑として拒否したのです。
そして、
当直医に確認し、
本人の希望通り、
この朝はインシュリンは打たないこいとに。
このことは、
朝病棟師長に報告し、
インシデントレポートを提出しました。
実は、
この日はQさんの退院日でした。
後日、
当時の医療安全の副看護部長が、
病棟に来ました。
そして、
退院した翌日、
Qさんが家で亡くなっているのが発見されたと、
言いました。
副看護部長は、
もちろん私がインシデントレポートを提出したことで、
このエピソードを知っていました。
それで、
こう付け足しました。
「きっと罰が当たったのよ」
Qさん、
実は結構なクレーマーだったらしく、
副看護部長も手を焼いていたそうです。
亡くなった人んもことを、
悪くは言いたくありませんが、
私にはほぼ落ち度はなかったので、
副看護部長の言葉は、
いくぶん救われました。
ちなみに、
医療知識のない方への補足。
インシュリンを打たなかったことは、
死因には結びついていません。
このことがあってから、
このインスリン運用は、
長らく変わりませんでした。
しかし、
今は運用が少し変わり、
基本的に、
受け持ちの看護師か、
受け持ちの看護師から依頼を受けた者が、
インシュリンを打つ患者に、
対応することになりました。
これで、
私のような事例は、
減ると思います。
長くなりそうなので、
続きは次項で。